英語で頻度上位5,000語を知っていれば、典型的な英語のネイティブ動画は95.6%が知っている単語になる。そして動画の58.4%が95%に達する。リスニング研究では、この95%が「よく理解できる」水準とされている。スペイン語では典型的な動画が95%に届くまでに約6,800語が必要で、計測した23言語のうち13言語では10,000語でも足りない。
この数字は、Reelangのカタログにある23言語・35,615本のネイティブ動画を、言語ごとの頻度リストと1語ずつ照合して出したもの。下で言語と語彙サイズを選べば、どこまで届くかが分かる。
最初の1,000語がいちばん働く
単語の頻度分布はひどく偏っている。数百語(the、and、is、you、que、de)だけで、人が話す内容の大きな割合を占め、リストの下に行くほど出現率は落ちていく。これはジップの法則として知られ、ここに出てくるどの言語でも成り立つ。
但し書きなしで順位づけできる18言語を通してみると、典型的な動画は上位1,000語で80.7%、上位2,000語で86.7%、上位5,000語で92.4%がカバーされる。最初の1,000語で、5語のうち4語が既知になる。次の4,000語が足すのは約12ポイントだ。
リスニングで効いてくる境界線は、その最後の数ポイントの中にある。「何語必要か」の研究で繰り返し出てくる数字は2つ。
- 95%、20語に1語が未知。Batia Laufer が読解について1989年に提案した。リスニングでは、van Zeeland と Schmitt(2013)が、多くの聞き手は90%でもすでに対応できており、95%では第二言語の聞き手がよく理解でき、個人差もずっと小さくなることを示した。
- 98%、50語に1語が未知。Hu と Nation(2000)は、学習者が自力で小説を読む場合、十分な理解にはこのくらい必要だとした。
普通の話す速さである毎分150語なら、95%は1分あたり約7語が未知ということ(Nation, 2006)。98%なら3語。その差は下のデモで体感できる。調査に使った動画の実際のセリフを使い、選んだ上位語に入らない単語をすべて伏せ字にしている。
2,000語では、ミートボールのセリフは58.3%しか既知にならない。albóndigas、parmesano、rallado、orégano はリストに入っておらず、perejil(パセリ)は13,520位。一方、猫についてのセリフは同じ2,000語で96.2%が既知。どちらもスペイン語で、どちらもA2とラベルされている。
英語とスペイン語を数字で見る
英語。 典型的な動画は2,021語で90%、4,462語で95%、9,403語で98%に達する。3,000語なら英語動画の24.9%が95%以上。5,000語なら58.4%が95%以上で、15.2%が98%以上になる。
スペイン語。 典型的な動画は2,754語で90%、6,781語で95%に達する。98%には10,000語以内では届かない。3,000語ならスペイン語動画の10.8%が95%以上。5,000語なら32.0%。
つまりスペイン語なら、3,000語の学習者は10本に1本くらい、単語の95%が既知の動画に出会える。これは学ぶ材料としては十分な数だ。まだ知らない単語が、知っている単語に囲まれて出てくるからだ。このコロンビアの動画もその一本で、単語の88.4%が上位1,000語、96.3%が上位2,000語に入っている。
ただし、単語を知っていることと、聞き取れることは別だ。この動画の話し手は中央値で毎分243語。教科書の音声よりずっと速い。語彙カバー率が教えてくれるのは、文字起こしなら理解できるかどうか。速さについていけるかどうかは教えてくれない。
なだらかな言語と急な言語
曲線の形はどれも同じではない。デンマーク語、スウェーデン語、オランダ語では、上位1,000語だけで典型的な動画の84.4〜86.5%をカバーし、1,000語から5,000語に増やしても8.3〜9.3ポイントしか伸びない。英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語は同じ範囲で11.5〜12.6ポイント伸びる。いちばん急なのはインドネシア語(+20.8)、ウクライナ語(+18.3)、アラビア語(+18.1)、ロシア語(+16.5)、フィンランド語(+15.3)、トルコ語(+15.2)、ポーランド語(+14.3)。
曲線が急だということは、最初の1,000語では未知の部分が多く残り、その先の1,000語ごとの価値が高いということ。原因の一部は言語そのものにある。もう一部は数え方にあり、2つの言語を比べる前にそこを説明しておく必要がある。
ここで使ったリストはレンマ化してある。dije、dijo、decir はすべて decir という1語として数える。動詞の活用形が多いスペイン語には公平なやり方だ。ただしレンマ化は、その形を認識できたときにしか働かない。チェコ語、フィンランド語、ハンガリー語、ロシア語、ウクライナ語では、典型的な動画の延べ語数の9.0〜10.8%が、リストのどのレンマにも結びつけられなかった形だ。その多くは、ツールが格語尾を外しきれなかっただけの普通の単語。ここでは未知として数えているので、この5言語の数字は下限であり、実際のカバー率はもっと高い。下の表ではアスタリスクを付けてある。
複合語はドイツ語、オランダ語、北欧諸語に同じように不利に働く。Küchenschrank(台所の戸棚)のようなドイツ語の複合語は、両方の部分を知っていても、複合語全体がリストにない限り未知として数えられる。
レベル表示は語彙をほとんど変えない
カタログのすべての動画には、文字起こしを読んだモデルが付けたCEFRレベルがある。ここではA1(A0はA1に含む)からC1(C2はC1に含む)までの5段階にまとめた。もしラベルが語彙を反映しているなら、レベルが上がるほど多くの語が必要になるはずだ。最初の2,000語については、ほとんどそうなっていない。言語をまたいだ中央値(A1は11言語、C1は20言語で十分な本数がある)では、上位2,000語がカバーするのはA1動画で84.0%、A2で84.0%、B1で85.2%、B2で86.1%、C1で84.1%。
レベルの差が出るのは上の方の範囲だ。5,000語なら、単語の95%を知っている動画の割合はA1で30.2%、A2で20.6%、B1で22.6%、B2で15.5%、C1で4.5%。長さも理由のひとつ。サンプル中のC1動画の延べ語数は中央値338語、A1は81語。短い動画はそもそも珍しい単語が出る機会が少ない。
カバー率がいちばん低い動画は、ほとんどが食べ物の話だ。2,000語でのカバー率が最も低い英語動画25本のうち、約3分の2がレシピ、食レポ、お菓子の実食で、21本がA1かA2とラベルされている。スペイン語では低い方25本のうち11本が食べ物、3本が童謡だ。レシピの文法は単純(「にんにくを入れる、混ぜる、できあがり」)で、だからこそ低いラベルが付く。でも名詞は単純ではない。英語リストでは garlic が6,395位、tablespoon が11,551位。スペイン語では ajo が6,605位、sartén(フライパン)が11,125位。
英語の動画を2本。1本目はB2とラベルされた映画の予告編で、単語の96.9%が上位2,000語に入り、1,300語で95%を超える。2本目はA2とラベルされたスロークッカーのレシピで、上位2,000語に入るのは72.3%、95%を超えるのは tablespoon の順位である11,551語に達してからだ。
予告編も別の意味で簡単ではない。話し手の速さは中央値で毎分215語だ。レベル表示は速さ、文法、語彙を1文字に混ぜ込んでいて、抜け落ちるのが語彙の部分。2,000〜5,000語の段階なら、レベルだけでなく動画のテーマも見るといい。食べ物、料理、商品紹介はリストのずっと下の方の単語をたくさん使う。
方言・地域差でも違う
アラビア語だけは方言ごとに別の頻度リストで計測した。他の言語は地域差をまとめて1つのリストで扱っている。2,000語では、典型的なエジプト方言の動画が86.1%、イラク方言が79.6%、モロッコ方言が72.5%。モロッコ方言は典型的な動画の9.5%の単語がリストに入っていないので、差の一部はリストのせいだ。フランス語では、ケベックの動画が90.6%、フランス本国の動画が87.6%。ブラジルのポルトガル語は87.4%、ヨーロッパのポルトガル語は80.3%だが、ヨーロッパのポルトガル語は61本しかフィルタを通らず、しかも別のリストで採点しているので、この数字は慎重に扱ってほしい。
Nationの推定値との比較
話し言葉の英語についていちばん有名な数字は、Paul Nation の2006年の論文「How large a vocabulary is needed for reading and listening?」によるもの。ニュージーランド英語の話し言葉コーパスを使い、3,000語族に固有名詞を足せばカバー率95%を超え、98%には6,000〜7,000語族が必要だとした。Webb と Rodgers(2009)は映画の脚本で似た数字を出している。3,000語族に固有名詞と周辺語を足して95.76%、6,000語族に同じものを足して98.15%。
私の英語の数字はこれより高い。典型的な動画が95%に達するのに4,462語、98%に9,403語。すべての英語動画を1本の長いテキストとして扱うと、5,000語で95.1%をカバーする。数字が食い違う理由は3つあり、どれも「どちらかが間違い」という話ではない。
- 語族はレンマより大きい。語族は happy、unhappy、happiness、happily をまとめて1単位として数える。レンマのリストでは4つだ。だから3,000語族はもっと多いレンマ数に相当する。
- リストは主に書き言葉から作られている。日常の話し言葉の語は、思ったより下の方にある。alright は3,102位、kinda は2,333位、bye は3,273位。
- 短い動画は1つのテーマに絞られる。2分のレシピは大半の単語を1つの分野の語彙に使うが、長い会話はあちこち話題が動き、一般的な語をより多く使い回す。
語学学習者にとっての意味
最初の2,000〜3,000語は、頻度順のデッキや教材で意識して覚える価値がある。そこまで来れば、ネイティブ動画のかなりの割合が95%の射程に入り、そこからはリストではなく文脈から新しい単語を拾えるようになる。そこへ早くたどり着く方法は、Christian Lauer の初心者向けガイドにまとまっている。
その後は、レベルだけでなくテーマで動画を選ぶこと。スペイン語3,000語の学習者なら、上の猫のスケッチは追えても、ミートボールのレシピでは迷子になる。どちらもA2なのに。それからチェコ語、フィンランド語、ハンガリー語、ロシア語、ウクライナ語については、ここの数字は実際より厳しく見えると思っておいてほしい。未知として数えられているものの多くは、知っている単語にまだ出会っていない語尾が付いただけだ。
上のような動画で練習したいなら、スペイン語、英語、ドイツ語のページにレベル別のネイティブ動画が並んでいる。字幕はこのページの動画と同じ、1語ずつ対応したものだ。なぜ話すより先に理解が来るのかについては、頭の中で訳すのをやめる方法も読んでみてほしい。
計測方法
動画。 対象は2026年9月29日時点でReelangのカタログにあり、ローテーションに入っていたもの。つまり公開済みで、音声に発話があり、ネイティブ向けの内容(語学レッスンではない)で、吹き替えではなく、1言語のみのもの。言語ごとにCEFRレベルごと最大500本を抽出し、各レベルにカタログ内の比率で重みを付けた。だから数字はカタログ全体を表している。50語未満の動画、同じ字幕行が繰り返される動画(行の30%超)、再生時間あたり毎分330語より速い動画、単語の35%超がその言語のリストにない動画(たいていは文字起こしの言語違い)は除外した。その結果、順位づけした23言語で35,615本、延べ1,380万語が残った。動画の長さの中央値は81秒。うち35,600本がYouTube、8本がTikTok、7本がInstagramから。
単語。 各文字起こしを空白と句読点で単語に分け、小文字化し、数字を除いた。各単語はその言語の頻度リストで引く。リストはwordfreq 3.1.1(Speer, 2022)から作成し、頻度上位25,000の語形をsimplemmaでレンマごとにまとめ(アラビア語、ヘブライ語、アジア系言語は別のツール)、レンマごとの合計頻度で順位づけした。リストにない語形はsimplemmaでレンマ化してフォールバックとした。固有名詞(大文字始まりで文頭ではなく、リストにないもの)と uh、mhm、haha のような周辺語は、Nation(2006)や Webb と Rodgers(2009)と同様に既知として数えた。ドイツ語は名詞をすべて大文字で書き、ヒンディー語とアラビア語には大文字がないので、これらの言語には固有名詞の加点はない。英語では短縮形の各部分を完全形として数えた(didn't は did と not)。
数値。 カバー率は、動画内の延べ語のうちレンマが上位N語に入るものの割合。上の百分率は動画間の中央値。「95%に達する動画の割合」は、各動画の単語順位から正確な境界を計算しており、補間はしていない。「典型的な動画が95%に達する語数」は、中央値の動画が95%を超える最小の語彙サイズ。
順位づけから除外。 ヘブライ語は接頭辞(ve-、ha-、be-、le-)を切り離していないので、既知の語が未知として数えられる。タミル語は文字起こしが話し言葉で、リストは書き言葉。日本語、中国語、韓国語は内容語のみ、ベトナム語は音節で数えているので、他と比較できない。順位づけには最低300本が必要。ノルウェー語は449本、他の順位づけ言語はすべて1,000本超。トルコ語のリストはレンマが9,088件しかないので、トルコ語のグラフは8,000語で止まり、「10,000+」はリスト全体を使っても典型的な動画が95%に届かないという意味。
既知の偏り。 この数字は音声ではなく文字起こしを表しているので、音声認識の誤りも単語として数えられる。上位N語を完璧に知っているというのは理想的な想定で、慣用句はまとまりとして数えていない。CEFRレベルは文字起こしに対するモデルの判断。そしてカタログは学習者向けに選ばれていて、聞き取りやすく幅広く受ける動画に寄っている。YouTubeやTikTok全体の無作為標本ではない。
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| 言語 | 本数 | 1,000 | 2,000 | 5,000 | 95%以上 | 98%以上 | 95%到達 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| デンマーク語 | 1,122 | 86.5% | 91.1% | 94.8% | 47.0% | 8.4% | 5,292 |
| 英語 | 2,002 | 83.7% | 89.9% | 95.6% | 58.4% | 15.2% | 4,462 |
| スウェーデン語 | 1,325 | 85.6% | 89.8% | 94.0% | 37.6% | 5.6% | 6,768 |
| オランダ語 | 1,841 | 84.4% | 89.0% | 93.7% | 32.2% | 3.5% | 7,109 |
| フランス語 | 1,961 | 82.7% | 88.4% | 94.2% | 40.1% | 5.8% | 5,804 |
| ノルウェー語 | 449 | 83.5% | 88.1% | 93.0% | 25.0% | 3.8% | 9,478 |
| スペイン語 | 2,195 | 81.6% | 87.3% | 93.5% | 32.0% | 5.4% | 6,781 |
| ポルトガル語 | 1,865 | 81.4% | 87.2% | 94.0% | 38.4% | 7.3% | 6,121 |
| ルーマニア語 | 1,602 | 81.4% | 87.0% | 92.5% | 25.3% | 5.8% | 9,586 |
| エスペラント | 1,007 | 80.0% | 86.3% | 92.3% | 28.6% | 4.5% | 10,000+ |
| イタリア語 | 1,880 | 79.7% | 85.6% | 91.9% | 21.2% | 2.7% | 9,269 |
| トルコ語 | 1,322 | 77.1% | 85.6% | 92.3% | 25.4% | 5.5% | 10,000+ † |
| ドイツ語 | 1,933 | 80.0% | 84.8% | 90.3% | 11.3% | 1.1% | 10,000+ |
| ギリシャ語 | 1,796 | 78.0% | 83.5% | 89.0% | 6.7% | 1.0% | 10,000+ |
| ヒンディー語 | 1,417 | 77.2% | 82.4% | 88.3% | 6.6% | 1.2% | 10,000+ |
| アラビア語 | 1,916 | 73.1% | 82.2% | 91.2% | 17.8% | 2.7% | 10,000+ |
| ポーランド語 | 1,503 | 73.9% | 81.0% | 88.2% | 8.2% | 1.0% | 10,000+ |
| インドネシア語 | 1,582 | 68.6% | 80.6% | 89.4% | 10.4% | 2.3% | 10,000+ |
| チェコ語 * | 1,239 | 73.4% | 80.0% | 86.8% | 3.9% | 0.5% | 10,000+ |
| フィンランド語 * | 1,565 | 71.7% | 79.3% | 87.0% | 3.6% | 0.8% | 10,000+ |
| ハンガリー語 * | 1,732 | 71.7% | 78.1% | 84.5% | 0.4% | 0.0% | 10,000+ |
| ロシア語 * | 1,305 | 70.0% | 77.8% | 86.5% | 2.9% | 0.1% | 10,000+ |
| ウクライナ語 * | 1,056 | 65.4% | 73.4% | 83.7% | 0.8% | 0.0% | 10,000+ |
1,000、2,000、5,000の列は、上位1,000・2,000・5,000レンマがカバーする動画内の延べ語の割合(中央値)。95%以上と98%以上は、上位5,000レンマを知っている学習者が単語の95%または98%以上を知っている動画の割合。95%到達は、中央値の動画が95%を超える語彙サイズ(10,000+は10,000語以内では届かないという意味)。* 下限値。典型的な動画で9%以上の単語がリストに結びつけられなかったので、実際のカバー率はもっと高い。† トルコ語のリストはレンマが9,088件しかなく、典型的なトルコ語の動画はリスト全体でも95%に届かない。
出典
- Hu, M. H.-c., & Nation, I. S. P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13(1), 403-430. doi.org/10.64152/10125/66973(全文無料)
- Laufer, B. (1989). What percentage of text-lexis is essential for comprehension? In C. Lauren & M. Nordman (Eds.), Special language: From humans thinking to thinking machines (pp. 316-323). Multilingual Matters. 書誌情報
- Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? The Canadian Modern Language Review, 63(1), 59-82. doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59, 無料PDF
- Speer, R. (2022). wordfreq v3.0 [data and software]. Zenodo. doi.org/10.5281/zenodo.7199437. 本調査では github.com/rspeer/wordfreq のリリース3.1.1を使用。
- van Zeeland, H., & Schmitt, N. (2013). Lexical coverage in L1 and L2 listening comprehension: The same or different from reading comprehension? Applied Linguistics, 34(4), 457-479. doi.org/10.1093/applin/ams074
- Webb, S., & Rodgers, M. P. H. (2009). The lexical coverage of movies. Applied Linguistics, 30(3), 407-427. doi.org/10.1093/applin/amp010
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